なるほどサイエンス(電池がもたらした新たな「文明」)

電池がもたらした新たな「文明」

 
12月10日のノーベル賞の授賞式に、今年も日本の研究者が登壇します。リチウムイオン電池を開発した旭化成の吉野彰・名誉フェロー(71)が海外の2氏とともに化学賞に選ばれました。
 
科学医療部の記者は毎年、10月の受賞者発表が近づくと、有力研究者の記事を準備するのが恒例です。そのなかで私が今年、いちばん受賞してほしいと思っていたのが、リチウムイオン電池の開発でした。この電池が社会を激的に変え、全世界に新たな「文明」をもたらしたからです。
 
吉野さんがいまのリチウムイオン電池の原型をつくったのは1985年。私が記者になった年です。当時、職場にあった携帯電話は巨大で、電池は「弁当箱」と呼ばれていた重さ数`の予備電池を併用しても、もって数十分。とても日常で使えるような代物ではありませんでした。
 
それが超小型で軽量のリチウムイオン電池の登場によって、社会はみんなが携帯電話やパソコンを持ち歩く「モバイル時代」に突入します。2007年にアメリカのアップルがiPhoneを発売すると、街はスマートフォンを手にした人であふれるようになりました。
 
もしリチウムイオン電池がなかったら、私たちの暮らしは、まったく違うものになっていたでしょう。「GAFA(ガーファ)」と呼ばれる巨大IT企業、グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルが全世界に絶大な影響力を及ぼすことも、電気自動車が「化石燃料を使わない社会」の実現に向けて走り回ることも、なかったはずです。

朝日新聞編集委員 上田 俊英



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